車の鍵を入れるのにちょうどいいサイズ
マイクロサッチェルにいつも入れているのは、車の鍵です。私は車で移動することが多く、車の鍵を出し入れしやすい小さなバッグが欲しいと思っていました。大きなリュックの中に鍵を入れていると、「あれ、どこにいったかな?」って探す羽目になることが多くて。マイクロサッチェルは本革で形がしっかりしているから、鍵を入れておくのに収まりがいいんです。置いて自立するところも便利。軽くて小さく、体にフィットする感じもいい。ちょっと買い物に行くときなどは、これ一つで出かけています。
普段から、白やオフホワイト、ベージュの服を着ることが多いので、それに合わせて色は茶色(CHESTNUT)にしました。運転することもあり、体にピッタリした服よりは、ゆったりとしたシルエットで動きやすい服を好んで着ています。オーバーサイズの服やスウェット生地の服に、マイクロサッチェルのような少しかっちりした小物を合わせるとアクセントになるんですよね。
物体を作るのとは違う、形がない言葉の表現のおもしろさ
子どもの頃からファッションに興味があり、地元の神奈川県・厚木にいながら東京のギャルやゴスロリファッションの人たちに憧れていました。そこで高校時代にファッション関係のことを学び、大学では服飾文化史を専攻。その中で、ファッションに内包される大量生産・大量消費というビジネスの部分と、自分が時間をかけて作る服の間の乖離が気になってきました。私がやりたいことは、むしろアートに近いのかもしれない。ファッションと美術の間の表現について考えたくなり、美学校で美術を学ぶことにしました。
自分が作った服を着てパフォーマンスする、ということを表現の一つの手法として考え始めたときに、観に行ったライブイベントで、アイドルがラップをしていたんです。それにピンときて、オーディションを受け、ラップをメインとしたアイドルグループに所属することにしました。その後独立して、今は一人でラッパーとしてステージに立っています。
ファッションや美術はアウトプットまでに時間がかかりますが、言葉は出したいときにすぐ出せる。しかも、考えていることを直接伝えられる。でも、服や絵みたいにモノとしての形はない。そこが、言葉や音の表現のおもしろいところだと感じています。
ファッションと美術、そしてラップの表現をリンクさせる試み
ラップで表現したいのは、日常の風景や思ったことなどの、言葉にしないと消えてしまうもの。それを、自分一人の世界で完結せず、聞いた人たちにも同じ世界が見えるような形で表したいんです。共有はしたいけれど、直接的で簡単すぎる表現にはしたくない。感じ取り方は人それぞれでありながら、一つの同じ世界を見せることができたらいいな、と思っています。
今は、ファッションや美術とラップの表現をうまくリンクさせるために試行錯誤しています。ただ作った服を着てラップするのではおもしろくないので、観客が観たときに「この言葉の表現とファッション・美術作品はこうつながっているのか」とわかるようなことがやりたい。また、ファッションや美術に関心がある方には、ライブハウスの情報って届かないんですよね。そうしたジャンルの垣根ってどうやって越えたらいいのか、悩ましいです。
ファッションと美術、そしてラップパフォーマンスはまったく別物のように見えますが、重なっている部分は必ずある。その重なりを自分らしい表現に落とし込むため、いろいろなことを試していきたいです。
ラッパー・ファッションデザイナー
MCあんにゅさん
1993年生まれ。神奈川県厚木市出身。文化学園大学服装学部服装社会学科服飾文化史コースを卒業後、”ここのがっこう”、me fashionschoolでファッションを、美学校で細密画教場を中心に美術を学ぶ。仕事をしながら、ファッション、美術、音楽での表現活動を展開。東京都内を中心にイベントなどでラップ活動を展開。2021年にアルバム「あにゅばむ(1)」、翌年にシングル「失敗ばかりでごめんなさい」を発表。2023年7月にシングル「DARASUTA/on stage」をリリース。