派手な服とモノトーンの服、どちらにも合う黒いバッグ。
アーティスト・イラストレーター瀬崎 百絵
ポップでカラフルな絵が人気の瀬崎百絵さん。ジャポニズムとアメリカンポップアートの流れを汲む独自の世界観が見る人の目を奪い、魅了しています。そんな瀬崎さんがずっと愛用していたかばんの後継として選んだのは、黒のシュガーキューブでした。
ファッションアイテムは黒が多いけど、小物はド派手
私は物持ちがよく、革の黒いかばんを10年以上愛用していました。それが壊れてしまって、後釜となるかばんを探していたときに出会ったのがシュガーキューブです。ストラップが長くて、肩がけしやすいのがいいですね。ハンドル付きで手持ちもできるから、用途に合わせて使い分けています。
中にはリップやハンドクリームを入れたポーチ、小型のお財布、ハンカチなどを入れています。ポーチが大きくて、それ以外のものがあまり入らないんです(笑)。師と仰いでいる横尾忠則さんのイラストがデザインされたカラフルなポーチは、お気に入りのアイテム。こうした小物はカラフルなものを選びがちでド派手なものばかり持っています。
その一方、洋服やファッションアイテムは黒を選ぶことが多いですね。シュガーキューブも黒にしました。かばんは特に黒が使いやすいと感じています。個展などで人前に出る時はカラフルな服を着ることもあるのですが、そうした派手な服と普段のモノトーンの服、どちらにも合うのが黒のかばんなんです。
アパレルの会社に就職後、絵描きの道へ方向転換した
古着屋で働いていたことがあるくらい、服が好きです。特にマニッシュなスタイルが好きで、メンズライクな服をよく着ています。スカートはほとんど履かないですね。
絵を描くことも子どもの頃から好きで、高校生の時はノートの端に女の子のイラストを描いていました。クラスメイトに「これは誰?」と聞かれるのですが、特に誰かをイメージして描いていたわけではないので答えられない。なんとなく頭に浮かんだイメージを描いていただけなんです。今も女の人をメインモチーフにして描いていて、この頃の絵の延長線上に今の絵があるのだと思っています。
美術科のある大学に入りましたが、卒業してすぐアーティストになったわけではなく、アルバイトをしていた古着屋の会社の契約社員になる形で就職しました。その時は絵が一番好きで、次が音楽、三番目が服だったんです。でも、「三番目に好き」くらいだと、服が一番好きな人に抜かれていくんですよね。やっぱり私も、一番好きなことを仕事にしようと思い、会社をやめて絵に向き合うことにしました。
アパレルの会社にいた時から、デッサンの教室に通っていました。あとは線をきれいにするためにクロッキーの教室に2年通い、アクリル画の教室にも1年通いました。美術科があったとはいえ、私は美大に入っていないので、デッサンなどを専門的に学んだことがありませんでした。絵を描く人としてスタート地点に立てていないと感じていたんです。作風が決まる前は、ずっと描画の基礎固めをしていました。
理想の姿として切れ長の目の女性を描く
女性をメインモチーフとしたカラフルかつポップで少しシュールな今の作風は、自分のやりたいことや好きな要素を全部入れていった結果、出来上がりました。横尾忠則さんや佐伯俊男さん、アンディー・ウォーホルなどの絵が好きで、海外の絵本や浮世絵にも影響を受けています。
私の描く女性は目が鋭いと言われることがよくあります。それは私の理想の女性像がモデルの山口小夜子さんだからでしょう。古着屋時代に、仕事でファッションやカルチャーの歴史を調べていた際、1970年代から80年代にかけて国内外でモデルとして活躍した山口さんのことを知りました。彼女が切れ長の目と黒いおかっぱ髪で、パリコレクションに出る王道のモデルたちとは違う日本の美を体現していたことに衝撃を受けたんです。
それまでは自分の和風な顔にコンプレックスがありましたが、山口さんのような美しさもあるのだと教えてもらい、憧れの存在になりました。たくさんの絵を描くうちに、女性の造形は山口さんから離れて多様になっていっているものの、原点はそこにあります。
今後は、自分だけのアトリエを持つのが目標です。今は住居と絵を描く場所が一緒なのですが、もっと大きな絵を描くためにも専用のスペースがほしい。そのためにがんばっています。
アーティスト・イラストレーター
瀬崎 百絵さん
1992年、東京都出身、埼玉県在住。2017年にアーティスト活動を開始。「強い女性」をメインモチーフに、ポップでありながら一筋縄ではいかない、独自の世界観を表現している。アートとイラストレーションの境をボーダーレスに飛び越えながら、個展やグループ展への参加、月刊誌の扉絵やライブツアーのメインビジュアルなど、幅広いジャンルで活動中。アートフェア「UNKNOWN ASIA」などでの受賞歴あり。